昭和の手描き図面

細部までキチンと記載された図面は、建物同じくらい大切なものです。後にメンテナンスや改築工事をしようとした時、現況建物の図面があるか無いかではえらい違い。

 

昭和56(1981)年頃に描かれたA1サイズの図面をクライアントからお預かりしました。

意匠図、設備図、構造図合わせてその数99枚。A4サイズに製本折されて、固定製本されています。ファイルの厚さは約25センチ。

設計事務所として独立してからは、戸建て住宅ばかり扱っていますし、手書きの図面で、しかもこの量を扱うのは久しぶりです。昭和の建築士の気合が伝わってくるのか、妙に気持ちが高ぶります。

 

この頃、私はまだ中学二年生。建築のケの字も知らず、わずか数年後に設計事務所に転がり込むはめになるとも知らず、甲子園を夢見るただの野球バカ少年でした。

39年前ですから、パソコンもCADもなく、スマホどころか携帯電話もなく、連絡は固定電話かFAX。製図はもちろんドラフターで手描きです。

 

破かないように1枚ずつそっと図面を見ていくと、きれいな線で線の太さや濃さを変えながら描かれたなんとも味のある図面です。この図面を描いたのはどんな人か知りませんが、きっと製図職人みたいな人だったことでしょう。昔の建築士は皆そうでした。確かに手描きの図面は作図した建築士の指先から気持ちが入るのか、伝える力が強いように感じます。多くの情報が詰まっている気がします。私が設計事務所に入った頃も図面はまだ手書きでしたので、「生きた線を描け!気を抜いた線を描くな!」などと叱られました。最初はまともな線が描けませんでしたから、設計どころか製図も出来ず、原図から青焼きコピーを取って、製本折して製本するような雑用が私の主な仕事。こういうの2部つくったら一日が終わる感じでした。

 

懐かしくて泣きそうですが、感傷に浸っている場合ではありません。この状態では扱えないので、専門業者さんに依頼して、まずは製本したままスキャンしてもらって、PDFデータにします。さらにそこからBIM化に進みたいところですが...、とりあえずそれは無理か。

 

↓スキャンをお願いする業者さん

http://www.k-kawamata.co.jp/business/print/scan-service/#head_bg

 

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